議員の定数問題
昨今の政局において急浮上した議員定数問題。
様々な意見が飛び交っているが、「多すぎる・少なすぎる」といった個人の感覚的な語りではなく、政治になにを求め、それを実現するためには、どれだけの人数が適正かを冷静に議論しなければならない。
南アルプス市においても、議員定数報酬適正化部会が発足し、議論が始まっており、私もその部会に所属している。論点は多岐に渡るが、私なりの考えを共有したい。
なぜ今、定数の適正化が必要か
まず、議員の定数の適正化を検討する必要性はなにか。それは、日本(地域)のおかれている情勢の変化や多様化する社会課題に対し、市民の負託に応え得る議会の形成に適当な議員数を確保することによって、質の高い議論を担保し、もって市の発展に資するためである。
また、地方自治の観点から、議員の定数は各自治体の条例で定められるものである。画一的な基準がないことから、自己決定が必要な事案であるため、各自治体の在り方が問われつづける問題でもある。
定数議論における基本的な視点
議員定数についての私見は、次の通りである。
議員は市民の代表として、行政の監視機能を担うとともに、各地域や諸団体の声を聴き、行政に届ける役割を担っている。したがって、市民の立場、また各町会や団体側からすれば、自身の声を直接聴き、市政に届けてくれる議員はより多い方が望ましく、多様な意見が尊重される民主主義の実現のためには安易な定数削減は好ましくない。
一方で、多様な意見を議論・集約し、自治体としての意思形成をする合議体としては、数が制約なく多くなることを必ずしも益としない。市民に最も近い自治体の自治にとって、市民の多様な意見を集約していく過程は非常に重要であり、その過程が明らかにされていくことが期待される。その意味では、議論による意見集約が、限りある時間のなかで可能となる人数が定数の上限になり得る。また、議員はボランティアではなく、各自治体から報酬が支払われることから、際限なく増やすこともまた現実的でない。
上記の基本的な考えに則ったうえで、実際に定数を決定するために、いくつもの留意点が検討される。定数増減に係る監視機能への影響、面積及び人口に係る多様な住民意見の反映の可否、歳出に占める議会費の割合、継続的な議会運営(委員会運営)の可否、合併市である南アルプス市であれば、その背景や各地域の現状など自治体によって多種多様である。
定数維持を主張した理由
こうした留意点を踏まえ、私は本市において定数維持の立場をとった。根拠としては、専門的な議論を深めるために常任委員会を重視する(委員会主義をとる)本議会の運営実態に鑑み、各委員会の人数から定数を考察することの合理性を確認した点である。識者間では、7名ないし8名が適当とされ、本市はそれに準じている。また、市(行政)の政策によって、本市の人口は微増している点、さらには6町村が合併し都市部や山間地など多様な特性を有する本市において、各地域の諸課題を広く聴くためには現状の議員数が望ましいと考えたからである。
おわりに
この意見は、現時点の南アルプス市議会における適正化を検討した結果であり、状況が変われば、その都度、丁寧な議論のもと意見集約が必要となる。自治体の在り方に完成形はなく、守り続けるためには、変わっていかなければならない。


