代表質問を終えて

はじめに

本代表質問では、大きく二つのテーマを取り上げた。第一に「未来を担うひとづくりと教育・研究機関誘致を見据えた成長戦略」、第二に「ひとつの市としての南アルプス市確立に向けた公共施設再配置」である。いずれも、私の政治哲学の根幹である「自立と協同」に基づく問題提起であり、個人が自立的に生きていける環境を整えること、そして合併から20年を経た本市が真に「ひとつの市」として機能する構造をつくることを求めたものである。

第1テーマ:教育と産業の構造的ミスマッチを正す

問題の核心――卒業生の産業人材接続率1.6%という現実

少子化が加速する中、若者が地域で自立して生きていける環境を整えることは、産業の持続的発展にとって不可欠である。この認識のもとに市の現状を問うたところ、執行部からも「教育と産業の接続を意識した人材育成に関与していく必要がある」との答弁を得た。

しかし問題は、認識にとどまらず構造にある。質疑を通じて明らかになったのは、市内県立高校(白根高校・巨摩高校)の過去4年間の卒業生1,282名のうち、就職を選択した生徒はわずか59名(約4.6%)、そのうち本市の基幹産業である農業・製造業等の第一次・第二次産業に進んだ生徒は21名という数字である。全卒業生に対する比率はわずか1.6%に過ぎない。

この数字が意味するのは、市内県立高校が本市の産業基盤を支える人材のパイプラインとして事実上機能していないということである。「普通科だから仕方ない」という見方もあるが、それこそが構造的ミスマッチの正体であり、産業が求める専門人材を体系的に育成する教育機関が市内に存在していないという根本的欠陥を直視すべきである。

二つの政策アプローチ

この構造に対し、短期と中長期の二つのアプローチを提案した。

短期策:就職希望者への直接支援制度の創設。普通科の生徒であっても地元で働きたいと願う若者はいる。しかし彼らには専門技術がない。行政が資格取得費用や運転免許取得費用を直接助成し、企業が若者を採用・育成しやすい仕組みを用意すべきである。財源については一般財源のみに頼らず、人材確保に課題を持つ企業からの「企業版ふるさと納税」を活用するスキームを提案した。執行部からは「産官双方にメリットのある制度であり、活用を検討する」との答弁を得ている。

中長期策:高等専門学校の誘致と県立高校改革。5年間一貫の実践的教育により即戦力人材を育成する高専は、ものづくり産業が集積する本市にとって親和性が極めて高い。山梨県知事も県内への高専設置に言及している今こそ、地元自治体から先手を打って、市内県立高校を拠点とした高専機能の導入を県に対し戦略的に提案すべきである。県の所管であることは承知の上で、県にとっても県立高校改革のモデルケースとなり得る点を強調した。

さらにその先へ――リニアを活かした学術研究都市構想

リニア中央新幹線の開業により、品川から約25分、名古屋からも1時間圏内という立地が実現する。これを踏まえ、私立大学や企業の研究所、大学院のサテライト拠点やリカレント教育機関の誘致を、リニアビジョンの中に明確に位置づけるべきであると提案した。本市を単なるベッドタウンではなく、次世代農業や高度なものづくりを研究する「学術研究都市」として構想すべきであるという主張である。

執行部からは「次年度から策定するリニアビジョンにおいて、リニア効果を主体的につかみ取る方針を定める」「教育機関・研究機関の誘致を位置づける中で具体的な体制・手法を検討する」との答弁があり、部局横断のプロジェクトチーム設置についても「全庁的推進体制の整備が不可欠」との認識が示された。

第2テーマ:公共施設再配置と「ひとつの市」の確立

合併の本来の目的を問い直す

平成の合併から20年が経過したにもかかわらず、旧町村役場の機能を残したまま庁舎・支所が物理的に分散し続けている現状は、人員配置の効率化やDXによるコスト削減効果に構造的な制約をもたらしている。執行部もこの点について「業務の重複や非効率、職員配置の硬直化が生じやすい」と認識を示した。

私がここで問うたのは、合併の本来の目的に対する誠実な振り返りである。行政の効率化のために合併が行われ、施設集約のための合併特例債という優遇措置が講じられた。本市はその発行可能額のほぼ全額である412億7,670万円を活用したが、その配分を見ると、教育・生涯学習施設が約36%を占める一方、行政機能の集約に直結する庁舎及び支所整備にはわずか約5%しか充てられていない。施設集約が十分になされなかったことは、本市のまちづくりにおける機会損失ではないだろうか。

921億円の潜在的負担

本市の公共施設を現状のまま更新した場合、向こう30年間の更新費用は約921億円、年平均30.7億円という試算が執行部から示された。老朽化した庁舎・支所を維持し続ければ、この潜在的な財政負担はそのまま将来の市民負担となる。加えて、建設コストが高騰するインフレ局面において決断を先送りにすること自体が、コストの増大を意味する。

将来負担比率がマイナスであるという本市の財政指標は、裏を返せば、来るべき大規模再編という未来への投資を実行し得る体力の証左でもある。この体力を活かして構造を変える改革に踏み出すべきである。

本庁舎の在り方を含めた抜本的再編へ

支所機能の集約を進めるならば、受け皿としての本庁舎の在り方も問われる。現在、本庁機能すら分庁舎に分散している非効率を是正し、新たな司令塔づくりを含めた行政拠点の再編が必要である。執行部からは「本庁舎を含めた行政機能の配置の在り方についても、検討の視野に入れていく」との答弁を得た。

結びに

本代表質問を通じて一貫して主張したのは、「削ることではなく、組み替えることで全体の価値を高めるプラスサムの改革」である。教育と産業の接続においても、公共施設の再配置においても、問題はゼロサム的な縮減ではなく、限られた資源の再配置と制度設計の刷新によって、より大きな価値を生み出す構造への転換にある。

若者が地域で自立して生きていける選択肢を整えること、そして合併から20年を経た本市が名実ともに「ひとつの市」として機能する体制を構築すること。この二つの改革を、リニアビジョンの策定と同時に具体的な推進体制のもとで進めていくことを強く求めた。